設計事務所で働く若手所員の方をゲストに迎え、トステムブランドの技術者との情報交換を通じて、主にサッシのデザインや性能、新しいディテールの可能性などを一緒に模索していきます。
- Vol.10
原点に立ち帰るための現場での想像力<後篇>
光、風、風景…、すべてのバランスから導く最適の窓
ゲスト:影沢 多恵 - Vol.9
原点に立ち帰るための現場での想像力<前篇>
光、風、風景…、すべてのバランスから導く最適の窓
ゲスト:影沢 多恵 - Vol.8
機能から美しさへ
住まいの付加価値の追求と建築家の役割
ゲスト:井上 玄 - Vol.7
平凡さからの脱却
「どこにでもあるもの」から「どこにもないもの」を生み出すために
ゲスト:井上 玄 - Vol.6
サッシがつくる新しい開口部のかたち
規格品としてのサッシの可能性を探る
ゲスト:河内 英昭 - Vol.5
断面をデザインすることへのこだわり
住宅用サッシとビル用サッシの、違和感のない共存
ゲスト:河内英昭 - Vol.4
空間全体のバランスをとるための部材
空間全体のまとまりをつくる素材・仕上げの選択の自由度
ゲスト:木下治仁 - Vol.3
空間全体の寸法の基準となるサッシ
建物全体のバランスで考える開口部
ゲスト:木下治仁 - Vol.2
可能性を秘めた周辺部材
開口部の美しさを高めるチャレンジ
ゲスト:松尾宙 - Vol.1
表現部材として使いこなすサッシ
納まりの工夫で表現するアイデンティティ
ゲスト:松尾宙
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トステムのディテール vol.10
原点に立ち帰るための現場での想像力<後編>
─ 光、風、風景…、すべてのバランスから導く最適の窓
影沢 多恵(かげさわ たえ)(千葉学建築設計事務所)
圖師 丈揮・小林 貴明・水野 智洋(LIXIL)
司会: 真壁智治 (M.T.Visions)
圖師:今回の「サーモス」は、断熱性能とデザイン性とコストパフォーマンスを落とさずに両立させるために、「スマートシナジーシステム」という構造技術を開発しました。一言で言うと複層ガラスとフレームを一体化させる技術です。
今までの一般的なガラスとフレームの固定方法は、ガラスにグレイジングチャンネルを巻いた上にフレームを取り付けて固定させるというものでした。
影沢:ビードではないのですか?
圖師:ガラスの四周に巻いているものをグレイジングチャンネル(=グレチャン)、後付けでガラスとフレームの間に押し込んで納めるものをビードと呼んでいますが、役割としては同じものです。
今回の技術は、複層ガラスの製造工程でガラスとグレチャンを一体化させてしまうというものです。

こちらがサーモス用の複層ガラスで、見た目は一般のガラスと変わらないのですが、このようにグレチャンを手で引っ張ってもガラスが抜けなくなっています。従来のガラスでは、簡単にガラスが抜けてしまいます。一方、フレームとグレチャンは、一回嵌合したらなかなか抜けなくて、引っ張るとガラスだけ抜けるというのが普通です。
影沢:そうだったんですか。
圖師:しかし、今回は、ガラスとグレチャンが強固に一体化されています。もともとフレームとグレチャンは一度嵌合したら簡単には抜けないので、ガラスとグレチャンが連結されることが、大きな意味をもつのです。
影沢:あぁ、本当だ。
…住宅用商品は、みんなこのような仕組みになっているのですか?
圖師:いえ、今のところ、この「サーモス」だけです。
影沢:ガラスはシールで納めることが多いので、グレチャン付の窓はあんまり使ったことが無かったのですが…

圖師:今回、性能的には断熱性能を高めたいということがありました。断熱性能は複層ガラスの中央部が一番高いので、性能を上げるためにガラスの面積をできるだけ広げることが望ましい。一方、デザインの側からすればフレームをできるだけ見せないすっきりしたプロポーションを目指したい。その両方の目的から、フレームを細くする…という方向性が生まれました。細くすることで見た目もすっきりするし、ガラスの面積も広がる、更にそのガラスも一般複層ガラスが標準だったものを高断熱複層(Low-E)ガラスにしてしまえば…という流れから生まれたのがこの「サーモス」です。
影沢:ガラスは、Low-Eなんですね。
圖師:「サーモスH」はLow-E標準で、「サーモスS」は、一般の複層ガラスも選べます。

まず、たてすべり出し窓ですが、こちらが従来品で、こちらが「サーモスS」のたてすべり出し窓です。こうやって見ると、見付寸法がだいぶ小さいのが分かると思います。
影沢:全然違いますね。
圖師:今までのたてすべり出し窓は、FIXと比べたときにプロポーションがまるで違って見えてしまう、と良く言われていました。ですからコンセプトとしては、FIXと並べて違和感がなく、しかもそれが開閉する…といったイメージでつくられた商品です。
細かいところで言えば、排水構造を変えて水抜き穴も無くしています。

今までのオペレーターはつまんで回すような形状ですが、今回は総厚22mmの複層ガラスまで対応するので、組み合わせ次第ではかなり重くなることもあります。ですから、なるべく力を入れないで済むようなデザインを考えました。
影沢:それでも、この大きさになります?
圖師:サーモスは、シンプルなデザインと合わせ、子供からお年寄りまでだれもが使いやすいようデザインされているため、このくらいの大きさは必要になります。ただし、ブラインドなどを付けた場合、邪魔なときはこのように倒していただくということができます。
影沢:ああ、なるほど…、
以前、ガラスルーバーサッシを使った時に問い合わせてみたら、折れるタイプが無いメーカーさんもあるんですね。これは折れた方が良いです。 ただ、このオペレーターの素材って樹脂ですよね。樹脂ではなく、金物とかになりませんか?
圖師:素材感を出したいということですね。今後は色々と検討してみたいと思います。
…それでは他の商品も一通り、ご説明いたします。
影沢:はい。
圖師:次が、引違い窓です。こちらが従来品、こちらが「サーモス」の引違い窓になります。違いは、框側(障子)がフレームインになっているところです。

圖師:引違い窓に関しては、左右の框は隠しているのですが、上下の桟は隠していません。なぜなら引違い窓は、元々室内側から障子を建て込む「内嵌め内外し式」が基本としており、そのためには上下の桟を隠すことはできないのです。「内嵌め内外し式」でなければ、住まわれた後にガラスを破損されたときなど、メンテナンスの際に足場が必要になる場合があります。しかし、そのような事情を加味してもすべてのフレームを見えなくしたいという声も多くあります。こちらのフレームインタイプがそのニーズにお応えしたタイプです。こちらだと、見えているのは真ん中の召し合わせ框だけです。
影沢:あぁ、本当ですね。開けても良いですか?

圖師:どうぞ。こちらは「内嵌め内外し」ができなくなるので、2階に設置する時は、注意が必要です。それから、このフレームインタイプに共通しているのは、上下の内側の納まりをふかして納めているということです。よって、同じ基本寸法のサッシでも、他のタイプの窓と比べると、室内側が少し小さくなります。
影沢:外側合わせということですね。
圖師:はい。その点をご了解の上でお使いいただければと思います。
後は網戸ですね。網戸は、今までの標準の網戸だと、この高さは中桟付きになります。

影沢:この高さで…。(笑)
圖師:この高さで。(笑)
もちろん、もう少し小さくなったら付きませんが、この高さだと中桟が付くのが標準です。しかし、今回の網戸は中桟なしが標準になっています。
影沢:こちらに付く網戸は、中桟なしなんですね。
圖師:はい。それに伴い、網の張り方を変えることで、今まで真正面から見たときに網戸の縦框が少し見えていたのですが、今回はその寸法の見直しをして、室内外からほとんど見えなくなっています。


