プロジェクトプランナー 真壁智治をモデレーターとし、第一線で活躍する建築家をゲストに招き、現代における住宅計画の"研究"と"設計"の両面から討議します。

第6ターム
家のスガタとふるまい(2/3)
小泉雅生×藤本壮介×真壁智治
第6ターム
家のスガタとふるまい(1/3)
小泉雅生×藤本壮介×真壁智治
第5ターム
“場所性”と“形式性”の間で(3/3)
木下庸子×乾久美子×真壁智治
第5ターム
“場所性”と“形式性”の間で(2/3)
木下庸子×乾久美子×真壁智治
第5ターム
“場所性”と“形式性”の間で(1/3)
木下庸子×乾久美子×真壁智治
第4ターム
集まって住むことの新しいかたち(3/3)
西田司×中川エリカ×篠原聡子×真壁智治
第4ターム
集まって住むことの新しいかたち(2/3)
西田司×中川エリカ×篠原聡子×真壁智治
第4ターム
集まって住むことの新しいかたち(1/3)
西田司×中川エリカ×篠原聡子×真壁智治
第3ターム
2010年、建築家が考える「エコハウス」(3/3)
竹内昌義×難波和彦×真壁智治
第3ターム
2010年、建築家が考える「エコハウス」(2/3)
竹内昌義×難波和彦×真壁智治
第3ターム
2010年、建築家が考える「エコハウス」(1/3)
竹内昌義×難波和彦×真壁智治
第1・2ターム総括(後半)研究と設計の距離
真壁智治
第1・2ターム総括(前半)研究と設計の距離
真壁智治
Vol.11〜16
第2ターム
小泉雅生×高橋晶子×真壁智治
▼
Vol.0〜10
第1ターム
難波和彦×篠原聡子×真壁智治
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家の知/討議 vol.27第5ターム
“場所性”と“形式性”の間で(3/3)
木下庸子×乾久美子×真壁智治
サーベイからシチュエーションの読み取りへ
真壁:それでは、お二人のプレゼンを受けたところで、もう少し議論を深めていければと思います。プレゼンの中で、何を根拠に考えていくのか、という方法のヒントになる話がいくつか出たかと思います。まずはもう少し“場所性”ということについて話を掘り起こしていけたらと思います。
私のことを少しお話すると、私が学生だったころは、現代のような“場所性”のスタディなんてものは何も習いませんでした。“場所を読む”なんてことは言っていましたが、方法論というところまでは行きついていなかった。そういったことよりもむしろ社会的文脈でバサッと住宅をつくろうとしていました。つまりそこには場所にある潜在的情報を読み取ろうという解き方はなかったと思うのです。60年代後半からは、近代主義的な計画学とそれと真っ向から対立する社会的文脈や観念的文脈から家を志向していき“デザインサーベイ”を中心とする極めてバナキュラーな場所性の解説が試みられます。しかし、直接的に家の設計に場所論としてフィードバックされることはなかったというわけです。
木下さんが大学教育を受けていたころは、“サーベイ”という言葉はあったかと思いますが、“場所”の読み取りということがありましたでしょうか。あと、先ほど乾さんのプレゼンでは“シチュエーション”という言葉がでてきましたが、それも当時はどうでしたか。
木下:私の学生時代は、“タイポロジー”という言葉が意味としては近い表現だったように思います。“場所”というよりはむしろ“建築のコンテクスト”をよりどころにするという手法でした。“シチュエーション”という言葉も当時は“場所性”を表現する意見ではありませんでした。
真壁: 木下さんは、大学を出てその後、内井昭蔵さんの事務所で働かれていましたよね。そこでは割と公共的な仕事も多かったと思うのですが、その頃もまだ“シチュエーション”という言葉はなかった。
木下:そうですね。例えば内井昭蔵建築設計事務所で関わった学校設計などの例では、標準設計なるものがあって、基本、それを念頭に置きながら設計していくというプロセスでした。集合住宅なども同じで、基本パターンがいくつかあって、それが設計の基本となっていました。ちょうど1980年代は、3LDKが法規制をクリアしつつ部屋数も満たすオールマイティーな解として絶賛されていたころです。そこに“シチュエーション”という、場の特性を読み取るという考え方は必要なかったのでしょうね。
それを思うとやはり時代が変わったんですよね。用途に応じて計画をまず押さえ、その計画学に基づいて設計するという流れから、もっと個々の状況や要求を重視する方向に移行してきたのではないでしょうか。
真壁:その計画学自体が危うくなってきている。あるいは無能化してきたというところがあるのかもしれません。
木下:そうなると正解というものがますます見えなくなる。そこで乾さんのおっしゃるような“シチュエーション”というキーワードが設計の手がかりになり得るわけですね。“シチュエーション”というものは場によって異なってくる。それをもっと大切にして設計に反映させようと言うことが、今の時代の流れということなのでしょうね。
真壁:私はそういった流れが、一方クライアントにも起こっているのではないかと思います。今日の木下さんが紹介してくださった事例を見ていて思いました。つまり、クライアントの人間を把握する際にも“シチュエーション”的になっているのではないかと。それは、マーケティングのような一般的な意味での人物把握からは、やはり逸脱しているわけです。だから、クライアントの満足度は、趣味や学歴、年収というタイポロジーだけではつかまえきれないわけです。
木下:それはおっしゃるとおりだと思います。一般的なマーケティングとは違いますよね。私たちがつくりあげるものは、結構長い間のやりとりの中から築き上げたプランですから。
先ほど、乾さんから言われて初めて気づきました。そうか、家族のためのリビングが確保されていないのに、趣味の車の場所が優先されている。日頃私が学生に対して講評していることとは真逆なことを実践しているようですが(笑)。けれども、やはり建築はクライアントがあってのものですから、正当化されることですよね。さらにわれわれが提案していく中で、クライアントも自分たちの生活を随分客観視して考えたようでしたし、そこから何を排除し、何を大切にするかということも整理されたのだと思います。

